2011年芥川賞「苦役列車」西村賢太さん死去。

日本の文学。小説家。何のために書くのか?

 今日、スマホが鳴ったので、気になって画面を見ると、「芥川賞作家西村賢太さん、54歳で死去。」とあった。「西村賢太」の名前ではピンとこなかったが、54歳の若さと、芥川賞という事で、「もしや?」と思って調べたら、「苦役列車」の作家であることが分かった。
 2011年に芥川賞を取った時、従妹のススメだったかで、この小説を読んだ。ゴツゴツした感じのぶっきらぼうな表現と、中卒にして家族の犯罪を理由に、社会に出なければならなくなった主人公が、冷たく・理不尽な社会の中で、生きて行く姿と、優しさや愛を求める姿に衝撃を受けたし、その頃私は、30歳前後だったが、主人公のやるせない孤独に、何となくシンパシーを覚えた。
 この本は、売れたし、森山未來さん主演で映画化もされた。映画は観ていないが。でも、私は本を読んだ時に「この作家は、今後どうするんだろうなあ?」と感じてしまった。
 小説を書くとは、本当に難しい作業だし、芥川賞や直木賞を一作書いて、受賞しても、その後、コンスタントに良い作品を書くのは本当に大変だと思う。だから、「苦役列車」は西村さんの半自叙伝みたいな所もあり、もうこの一作を、人生の内に書いて終わってしまうのでは…という印象を受けた。
 歌手や小説家・文学作品でも、本人の人生を、全て傾けて書いた歌詞や、小説は、純粋で嘘が無く、心を打つ。しかしまた、そこで全てのエネルギーを費やしてしまう人が多いと思う。西村さんは、無頼派などと言われているようだが、生活面も結構、無茶苦茶だったようだ。東京都の病院で亡くなったと読んだ。タクシー内で意識を失ったらしい。

 西村さん本人が、義務教育の終了の、中学卒業で、アルバイトなどを転々として仕事をしていたことは本当の事の様だ。作品と作家は別々のものだという考え方もあるとはいえ、なんとも寂しい最後に少し、哀悼の意を表したくて、ブログにアップする。苦役列車の主人公も、西村さん自身も、孤独のループから抜け出して欲しいと「苦役列車」を読んだ時に思った気がする。

 その時に、私も孤独で、「自分はここから救われたい。」と願っていた時期であった。