「銀河鉄道の夜」

宮沢賢治 この歳になって染み入る童話

 今年は、文学作品に触れようと色々と読んでいたが、ふと「小学校の時に学んだ『やまなし』という作品や、『注文の多い料理店』『セロ弾きのゴーシュ』など、なんとなくは面白いけれど地味な感じで、意味も難解だった、『宮沢賢治』の作品が今は少しわかるのでは…。」と思い、ずっとこれは読むべきだが…と思っていた、「銀河鉄道の夜」を含む14作品の童話(と言っていいか分からない。寓話的な要素もある)が収められている文庫本を購入した。

 今現在、色々な事があって、賢治さんと同じように少しだけ仏教を聴いていることなどもあり、「こういう深い意味が込められていたのか。」などと興味深い。
 また、不思議な世界観が描かれていてその部分も凄く面白いし心洗われるようなのだが、全ての題材において、人や動物の命の大切さや神を信じる心が貫かれており、「よだかの星」のよだか、「セロ弾きのゴーシュ」に登場する猫・かっこう・たぬき・野鼠など小さな生き物や植物への心からの優しい気持ちが伝わってくる。

 賢治は肺結核で37歳で亡くなっているが、終生、「人間の存在の罪」「生きる罪」ということを考え葛藤されていたのだろうかと思う。だから信仰も大切だったのかな。
 生前はどこも原稿を買ってくれず、トランク一ぱいの童話を残して亡くなられたらしい。

 「セロ弾きのゴーシュ」が絶筆だったようだが、賢治は音楽にも精通しており、ゴーシュの楽団が「第六交響楽」の練習をしている場面から始まる。つまり、ベートーベンの交響楽第六番「田園」のことのようだ。
 また、「銀河鉄道の夜」にはタイタニック号の沈没事故の話が出てくる。

 そういう事からも、広い視野で勉強し農学校で働くなどしながらも、自分のエゴと向き合って、本当にささやかな「ひなげし」の話や「あまがえる」の話なんかを書いて、人間として大切なことを伝えてくれていると感じました。

花巻農学校教諭時代の賢治さん