昨年、亡くなられた寂聴さんの代表作

美は乱調にあり 瀬戸内晴美

 「大正デモクラシー」なんて言うけれど、その当時の日本で、社会運動が高まり、人間一人一人の権利や、「生きる意味」などが論争となり、女性の人間的目覚めの運動なども相まって、政府や古い因習からの脱却が、あからさまに論議される時代があったようだ。
 平塚らいてうが発刊した「青鞜」もそういう時代に起こった、「女性文芸誌」だった。その「青鞜」の最も若いメンバーであり、最後「青鞜」をらいてうから譲られたのが、伊藤野枝だった。

 読んだ感想は、机上の論理だけでなくて、その人生を持って「自由」に向けて、因習や世間の目と闘ってに生きて行ったそういう姿勢は、誰にでもできるものではないという事と、自分の特異な恋愛関係や結婚生活を、隠すところなく小説や論評として、雑誌に投稿する、ある意味のふてぶてしさに恐ろしさも感じた。
 出てくる人物が、大体お金に困っているのだが、自分達の過激な恋愛を文章にして、お金を貰っていたりするのだ。

 最後に残虐に伊藤野枝と小さな甥と共に惨殺された、大杉栄は、「お互いの経済的自立・別居に暮らす・お互いの自由を尊重する(恋愛においても)」というようなことを、正妻と伊藤野枝、神近市子(元青鞜の編集者でのちに独立する、才女であった。)に公然と言い、4人で顔を突き合わすことなどもあり、結果的に進んだ恋愛観は泥沼の様相を経ていた。
 文学ってよく味わえていなかったけど、少しずつ読んでみようと思う。